体を反転させ、次のステップで力強くグッと引き寄せられた。
吐息を感じそうなほど近くにロイズの顔があって、ドキッとする。
たとえば、ロイズの瞳は綺麗なブルーグレーなのだとか、睫毛は艶やかで濡れたように見えるとか。
今更ながら、いろんな事に気づいてしまう。
ロイズの言う、心に想う人物を思い出すとは、こういうことを言うのだろうか?
【カロリア】
(そんなこと、あるわけないじゃない!
だって……踊ってるのは実際、ロイズとなんだし)
一瞬浮かんだ考えを、慌てて打ち消す。
それでも、重ねた手から感じるロイズの温もりや、腰にまわされた腕を必要以上に意識してしまう。
ロイズと踊るのは楽しいし、誰よりも上手に踊ることが出来る。
けど、どうしても意識してしまう。
触れられた箇所全て……。
満天の星空の下。
見ているのは月と星たちだけ。
この静かなダンスパーティーを、穏やかな光が包んでいた。
出来れば、このままずっとロイズと踊っていたい……。
私の願いを打ち消すように、曲は緩やかに終わった。
音楽が消えて訪れたのは、本当の静寂。
さっきより大きくなった鼓動に、ロイズが気づかないことを私は祈った。